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あなたは”美人”だから
Fujisankei Businessより


夜の『ふるあめりかに袖はぬらさじ』(演出・戌井市郎)は作家の有吉佐和子が主人公の芸者お園を新劇の大女優、杉村春子に当てて書いた作品で、彼女の代表作の一つになった。お園は坂東玉三郎に引き継がれて上演回数は杉村を上回り、今回初めて歌舞伎役者だけによる公演になった。

生前、玉三郎から相談を受けた杉村は「あなたは“美人”だからお園は無理じゃないかと言ったんですよ。ところが、玉三郎さんのお園になった」と述懐していた。玉三郎が美しい容姿を超越してお園という芸者の心を五感でつかみ取ったということだろう。

〈舞台は尊王攘夷論がくすぶる横浜の遊郭(ゆうかく)岩亀楼。お園が介抱していた病身の遊女亀遊(中村七之助)が恋人の藤吉(中村獅童)との将来をはかなんで自殺する。この事件が瓦版で「アメリカ人への身請けを断って自殺した攘夷女郎と」と書かれると、岩亀楼の主人(中村勘三郎)の思惑もあってお園は客への語り部になり、事件の虚像部分がふくらんでいく…〉

第一幕、岩亀楼の暗いあんどん部屋。病気で寝ている亀遊を見舞いにきたお園。

「おいらん具合はどうですか。あら嫌だ。真っ暗だよ。誰も戸を開けてあげないのかねえ…」

本筋に行く前の第一声に客席はざわつく。酒飲みで男女の道にも苦労して吉原から横浜へ流れてきた気のいい芸者そのもの。この女なら何か仕出かすにちがいないという観客期待のざわめき。

通訳の藤吉に向かって「私に手出しちゃいけないよ。男に手を出されたら私は決して逃げない女なんだからね」も、この女ならそうだろうなと思わせてしまうお園なのだ。

 商売っ気の盛んな岩亀楼の主人にそそのかされて攘夷派の武士らを前に、深川生まれの漢方医の娘だった亀遊を「武士の娘で、生まれは水戸ですよ。…ねえだんな」と虚像を広げていく。勘三郎との息が合って笑わせる。

 幕切れに余韻。ウソの一部がばれて攘夷派の武士に切られそうになったお園が腰を抜かしての長ぜりふの後、「それにしてもよく降る雨だねえ」と後ろ向きのまま幕になる。

 お園はうそつきではなく、けなげな女だったと後ろ姿が物語る。虚構が実像を超え、ひとり歩きして騒ぎが大きくなる現代世相も浮かんでくる。坂東三津五郎、中村福助、市川海老蔵らが脇を固め、原作の有吉氏が歌舞伎脚本として書いたのではと思わせる舞台。



『信濃路紅葉鬼揃(しなのじもみじのおにぞろい)』の写真あり。艶やかですね~~!

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